魔植物(1)
とりあえず小説1発目。
今後こんなコンセプトで書いていく予定です。
長くなりそうなので2回に分けますね。
「ふぅ、こんなものかな」
圭吾は画材をリュックにしまいこむと、森を後にすることにした。
美大の夏季休暇を利用して、家から電車で一時間もかかる森の風景を描きに来たのだが、その成果は充分だ。この絵がどんな風に仕上がるのか、彼は楽しみで仕方がなかった。
真夏とはいえ、森の中はとても涼しい。近くを流れる小川の音がより一層涼しくさせてくれた。
腕時計を見ると、すでに昼の三時を回っている。
来たときは良い風景を探すのに夢中で気がつかなかったが、どうやらずいぶんと奥まで入ってしまったらしい。帰る道を見失い、既に一時間以上はさまよっている。場所を探していた時より時間を費やしている。
「参ったな、こりゃ完全に帰る道を見失ったぞ」
圭吾は歩きつかれてその場に座り込んだ。
その瞬間、フルーツ牛乳を温めたような、ほんわかとした甘い香りが漂ってきた。
「なんだ?」
圭吾がとまどっている間にも香りは彼の鼻腔を刺激する。その心地よさに釣られて彼はふらふらと歩き出した。
――ここは?
気がつくと彼は見覚えのない場所に立っていた。
とても先ほどまでいた森とは思えないほど木が覆い茂り、「奥深く」なんて言い回しが合っているような場所だ。
こんな場所になぜ来てしまったのか、圭吾は訳が分からなくなっていた。
圭吾が辺りを見回すと、なにやら人影らしきものがひとつ見えた。
――よっしゃ!
圭吾はそこに向かって一目散に走り出した。
「すみません! ここから抜ける道を教えてもらえますか?」
その時だった。
走っていたはずの圭吾の脚が、突然動かなくなった。
圭吾は不思議に思い、下を見ると、何やらツタのようなものが足に絡み付いていた。圭吾は必死で取ろうとするが、かなり強く締め付けられて取ろうにも取れない。
「いたた……なんでこんなものが――」
「うふふ、捕獲成功」
いつの間にか、人影だったものは彼の目の前に来ていた。
現れたのはピンク色の髪をした女性。美女というよりは美少女といったほうがいいかもしれない。透き通るほど白い肌で、身に纏っている白いワンピースとの境目が見えにくいほどだ。
少女は年齢にそぐわないほど妖艶に笑い出した。
「久しぶりの獲物だわぁ。とっても美味しそう」
圭吾は畏怖の念を抱いた。
先ほどまで人間に見えていた少女の身体がするすると変貌していく。白い肌は木の葉のように真緑になり、身に纏っていたワンピースは絵の具が溶けるように消えていったが、スカートだけが逆にピンク色に染め上がり、彼女を包み込むように形を変えていった。
「あわ、あわあああ!」
先ほどまで少女だったものが化け物へと変貌した。
かろうじて顔つきと髪型だけが少女の面影を残している。加えて人間の色ではなくとも露になった乳房は男を魅了するには充分なものだった。
少女の背中からツタが伸びてきて、圭吾の両腕に絡みついた。圭吾は後手に固定され、全く身動きが取れなくなってしまう。
「た、助けてくれ……」
「ふふっ、無駄よ。私の香りに誘われた人間は二度とここから出られないわ」
「いやだ、まだ死にたくない……」
「あらあら怯えちゃって。安心して、私は命を奪うような種族じゃないから」
そういうと少女はおもむろに圭吾に唇を重ね合わせた。
「ん、うぐぐ……」
少女の口を伝って圭吾の胎内にドロドロした液体が流れてくる。甘酸っぱくいい香りのする液体に圭吾は興奮してしまった。
「うげぇ……げほっ、げほっ!」
ようやく唇が離れ、圭吾は咳き込んだ。
――身体が熱い、熱い。
圭吾の身体が急激に発熱するが、何故か圭吾にはそれが気持ちよく感じた。
圭吾の瞳が気力を失い、トロンとうな垂れる。脳が考えるのを止めて抵抗することもできなくなってしまう。
「どう? 美味しかったでしょ、私の蜜。あ、答えられないか。人間には強力な媚薬だもん。それじゃあ、今度は私が貰う番だからね」
今後こんなコンセプトで書いていく予定です。
長くなりそうなので2回に分けますね。
「ふぅ、こんなものかな」
圭吾は画材をリュックにしまいこむと、森を後にすることにした。
美大の夏季休暇を利用して、家から電車で一時間もかかる森の風景を描きに来たのだが、その成果は充分だ。この絵がどんな風に仕上がるのか、彼は楽しみで仕方がなかった。
真夏とはいえ、森の中はとても涼しい。近くを流れる小川の音がより一層涼しくさせてくれた。
腕時計を見ると、すでに昼の三時を回っている。
来たときは良い風景を探すのに夢中で気がつかなかったが、どうやらずいぶんと奥まで入ってしまったらしい。帰る道を見失い、既に一時間以上はさまよっている。場所を探していた時より時間を費やしている。
「参ったな、こりゃ完全に帰る道を見失ったぞ」
圭吾は歩きつかれてその場に座り込んだ。
その瞬間、フルーツ牛乳を温めたような、ほんわかとした甘い香りが漂ってきた。
「なんだ?」
圭吾がとまどっている間にも香りは彼の鼻腔を刺激する。その心地よさに釣られて彼はふらふらと歩き出した。
――ここは?
気がつくと彼は見覚えのない場所に立っていた。
とても先ほどまでいた森とは思えないほど木が覆い茂り、「奥深く」なんて言い回しが合っているような場所だ。
こんな場所になぜ来てしまったのか、圭吾は訳が分からなくなっていた。
圭吾が辺りを見回すと、なにやら人影らしきものがひとつ見えた。
――よっしゃ!
圭吾はそこに向かって一目散に走り出した。
「すみません! ここから抜ける道を教えてもらえますか?」
その時だった。
走っていたはずの圭吾の脚が、突然動かなくなった。
圭吾は不思議に思い、下を見ると、何やらツタのようなものが足に絡み付いていた。圭吾は必死で取ろうとするが、かなり強く締め付けられて取ろうにも取れない。
「いたた……なんでこんなものが――」
「うふふ、捕獲成功」
いつの間にか、人影だったものは彼の目の前に来ていた。
現れたのはピンク色の髪をした女性。美女というよりは美少女といったほうがいいかもしれない。透き通るほど白い肌で、身に纏っている白いワンピースとの境目が見えにくいほどだ。
少女は年齢にそぐわないほど妖艶に笑い出した。
「久しぶりの獲物だわぁ。とっても美味しそう」
圭吾は畏怖の念を抱いた。
先ほどまで人間に見えていた少女の身体がするすると変貌していく。白い肌は木の葉のように真緑になり、身に纏っていたワンピースは絵の具が溶けるように消えていったが、スカートだけが逆にピンク色に染め上がり、彼女を包み込むように形を変えていった。
「あわ、あわあああ!」
先ほどまで少女だったものが化け物へと変貌した。
かろうじて顔つきと髪型だけが少女の面影を残している。加えて人間の色ではなくとも露になった乳房は男を魅了するには充分なものだった。
少女の背中からツタが伸びてきて、圭吾の両腕に絡みついた。圭吾は後手に固定され、全く身動きが取れなくなってしまう。
「た、助けてくれ……」
「ふふっ、無駄よ。私の香りに誘われた人間は二度とここから出られないわ」
「いやだ、まだ死にたくない……」
「あらあら怯えちゃって。安心して、私は命を奪うような種族じゃないから」
そういうと少女はおもむろに圭吾に唇を重ね合わせた。
「ん、うぐぐ……」
少女の口を伝って圭吾の胎内にドロドロした液体が流れてくる。甘酸っぱくいい香りのする液体に圭吾は興奮してしまった。
「うげぇ……げほっ、げほっ!」
ようやく唇が離れ、圭吾は咳き込んだ。
――身体が熱い、熱い。
圭吾の身体が急激に発熱するが、何故か圭吾にはそれが気持ちよく感じた。
圭吾の瞳が気力を失い、トロンとうな垂れる。脳が考えるのを止めて抵抗することもできなくなってしまう。
「どう? 美味しかったでしょ、私の蜜。あ、答えられないか。人間には強力な媚薬だもん。それじゃあ、今度は私が貰う番だからね」