彼方なる廻廊

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「う、うぅぅ……」
　――ここは？　ボクは一体どうしたんだ？
　少年の意識が徐々に戻っていく。
　――そうか、ボクは初めてのモンスター討伐依頼に行って、そこで負けちゃったんだっ
け？　一緒に行った先輩の戦士と魔法使いの人もやられちゃって……
「うわああああぁぁああぁ！」
「あ、目を覚ました」
　少年が目覚めると、まずそこがトロルと闘った場所でないことに気がついた。同じ洞窟
の内部ではあるが、先ほどの場所よりも更に禍々しい気を放っている。
「こ、ここは……」
　少年は身体を動かそうとするが、四肢が言うことを聞かない。仰向けに寝かされて、大
の字の状態から全く動けなくなっていた。
「大丈夫？」
「気分はどう？」
　女の子の声が二つ聞こえてきた。まともに動けない状態だから姿が確認できないが、お
そらく二人とも同い年ぐらいの少女だろう。
「えっ……？　まぁ大丈夫ですが……」
「君の薬草が残っていたから使わせてもらったよ。私たち回復の魔法とか使えないから」
「君たちが助けてくれたの？」
　神官の少年は声の主に向けて話した。
「うーん、助けたといえば助けたことになるのかな」
「ところで君、名前はなんていうの？」
「ボクは……ルーエンスと申します」
「へぇ、ルーエンスか。じゃあルー君って呼ぶね。ルー君は今何歳？」
「えっと、15歳です」
「15歳かぁ。可愛い盛りだね」
「そして……とっても美味しそう」
　――なんだ？
　段々、少女たちの会話が怪しくなってくる。少年はその会話に萎縮してしまい、それ以
上話をしようと思えなくなってきた。
「これがオッサンとかだったらね」
「抜け殻にしちゃうところなんだけどね」
「ルー君かわいいからね」
「もっと可愛くしてあげるね」
　――この子たち、人間じゃない？　じゃあ一体……
　ルーエンスはようやく、自分の置かれている状況を見直すことができた。
　今までまともに身体が動かないので気付かなかったが、ルーエンスの装備品は全て外さ
れている。装備品どころか、下着も、帽子も、身に付けているものは全てきれいさっぱり
なくなっていた。
　そして問題の声の主がやっと姿を現した。彼を見下ろして笑っている二人の少女は人間
ではなかった。一見同じ人間の少女だが、黒いレオタード状の衣服を身に纏い、頭から二
本の角が生え、更には背中からコウモリを模したような羽を生やしている。
「ふふっ、怯えなくていいよ。ね、リリ」
　こっちの少女はピンクの長い髪を腰まで垂らしている。
「もうすぐ金縛りの魔法が解けるから。ね、ララ」
　こちらは同じくピンクの髪を、ツインテールに結わえている。

「それじゃあ……」
「いただきまぁす！」